
「存在論的デザイン」にフォーカスを当てた、「いまだそこにないもの」に「知」としての価値を見出していくイベントを存在論的デザインを学ぶ会、いまだここにないものを学ぶ会と共同して開催します。
「存在論的デザイン」を学ぶ会
6月6日(金)13時~17時 @東京都市大学渋谷PXU
■主催
・存在論的デザインを学ぶ会 *
・いまだここにないものを学ぶ会 **
・東京都市大学 渋谷PXU
*1986年に人工知能とコンピュータに関する議論の中で生まれた「存在論的デザイン」は、アルトゥーロ・エスコバルの『多元世界のためのデザイン』によって、多元的な世界の中で自律共生的=コンヴィヴィアルなデザインを実現するための議論として再度注目を集めるようになりました。 「存在論的デザインを学ぶ会」は、デザインすること、学ぶこと、コミュニティと生きることについて考えていく会として立ち上がりました。
**「いまだここにないものを学ぶ」とは、ユーリア・エンゲストロームの著書『拡張的学習の挑戦と可能性』の副題にある言葉です。私たちはすでに確定したものとしての「知」を習得することが「学習」であると理解しがちです。しかし、これまでに状況的学習論が明らかにしてきたように、何が知かは社会歴史的な文脈に依存しており、学習者になることは社会的実践に参加することにほかなりません。すると、常に変化し続けるこの社会歴史的状況にあって学習者になることとは、「いまだそこにないもの」に「知」としての価値を見出していくプロセスだと言えるでしょう。 本研究会は、このような考え方のもとで、知の社会的構成のダイナミズムを引き起こすような場を立ち上げることとしました。
■日時
・2025年6月6日(金)13時~17時
■会場
・東京都市大学 渋谷PXU
東京都渋谷区道玄坂1丁目10-7 五島育英会ビル8階
https://shibuya-pxu.tcu.ac.jp/
※当日は公共交通機関をご利用ください
※対面のみです・オンライン・オンデマンド配信は行いません
■定員
・20名
※事前申し込み制となります。
■参加費
・1500円
※会場でのお支払いとなります。
■登壇者
・上平崇仁(デザイン研究者/立命館大学教授)
・吉行ゆきの(ポルノグラフィ研究者/北海道出身)
・岡部大介(東京都市大学メディア情報学部)
・池原優斗(北海道大学大学院)
・蓮池公威(東京都市大学デザイン・データ科学部)
・津久井(香川)文 (東京大学特任専門職員)
・伊藤崇(北海道大学大学院教育学研究院)
■スケジュール(予定)※予告なく変更になる場合があります
13:00-13:10
開会挨拶 岡部大介(東京都市大学)
13:10-13:20
「存在論的デザインを学ぶ会」とは何を研究するのか 対談 上平崇仁(立命館大学)・池原優斗(北海道大学大学院)
13:20-13:50
話題提供 上平崇仁(立命館大学)
「存在論的デザインアプローチの実践へ」
存在論的デザインの概念が知られるようになったが、従来のデザインのアプローチと比較して何が決定的に違うのか、そうした視点からとらえることでなにが実践できるのかはまだまだ不明瞭である。ここでは実践にむけていくつかのキーワードと取り組み例に加えて、それを取り入れた立命館の教育カリキュラムを紹介する。
13:50-14:40
質疑応答
モデレータ:蓮池 公威(東京都市大学)・岡部 大介(東京都市大学)
14:40-14:55
休憩、名刺交換
14:55-15:10
「いまだここにないものを学ぶ会」とは何か 池原優斗(北海道大学大学院)
15:10-15:30
話題提供 津久井(香川)文 (東京大学特任専門職員)
「『状況に埋め込まれた学習:正統的周辺参加』を読み直す」
Lave and Wenger (1991) Situated Learning(日本語訳1993)が、横断的な学術領域や実務者など広く読者を獲得してきた一方、理論のオリジナリティの一部――たとえば社会理論、政治制度に関する論点などいくつかの点については未消化のまま残されている。本発表では、本書が依拠する文献の系譜、著者による研究の展開およびリフレクションを参照しながら、正統的周辺参加理論の含意をあらためて繙くことを試みる。学習を軸とした【社会的存在論】を定義しようとした本書をともに再訪したい。
15:30-16:10
話題提供 吉行ゆきの(北海道大学大学院)
「非同意性表現の受容と可能性」
SNS上でポルノグラフィが私的検閲・自主規制の対象となりつつある昨今、中でも、暴力的なポルノは、ポルノ擁護派の議論からも抜け漏れてきた。しかし、1950年代アメリカの女性作家ハリエット・ダイムラー作品のように、明らかに暴力的でありながら、読者に既存の性規範を克服する視点を与えるポルノは数多く存在する。発表者が日本で独自に築いてきたコミュニティにおいても、そのような暴力的ポルノを愛好する読者は多数存在する。その読者受容に焦点を当てることで、多様なセクシュアリティ理解の可能性を探る。
16:10-16:50
質疑応答
16:50-17:00
閉会挨拶 伊藤崇(北海道大学)
企画趣旨
新たな価値創造に関わる仕事をしていくうえで、「デザイン論」が重要視されています。特に、「人視点からの価値創造」に必要なことがら、より具体的には、「人を中心にしたデザイン(HCD)の態度」を身体化するうえで、人類学における存在論的転回と、それに基づくデザイン論の展開は、今日とても関心をもたれています。
アルトゥーロ・エスコバルの『多元世界のためのデザイン』は、近年の「存在論的デザイン論」を牽引する1冊です。この中で彼は、人とモノの関係を問い直します。この関係はダイナミックなものであり、デザインの過程において人間自身がデザインされ直されるとも指摘されます。
このたびわたしたちは、「『存在論的デザイン』を学ぶ会」と題して、デザイン人類学の領域で興味深い活動を展開されている上平崇仁氏(立命館大学)と、人類学の領域でこれから独自の領域を開拓しようとする若手研究者である吉行ゆきの氏(北海道大学大学院文学院)をお招きし、たっぷりとお話をうかがいながら、「いまだそこにないもの」に「知」としての価値を見出していく会を企画しました。上平氏からは、教育や実践の観点から「存在論的デザイン」についてお話いただき、吉行氏による「性表現と性規範の克服」をテーマとした、文学と文化人類学の間を越境する視座について議論したい。
わたしたちは、すでに確定したものとしての「知」を習得することが「学習」であると理解しがちです。しかし、何が「知」なのかはその文脈その文脈に依存しており、常に変化し続けます。「いまだそこにないもの」に「知」としての価値を見出していくプロセスを愉しめたらと思います。
この大胆で奇妙な「学ぶ会」(パーティ)にご興味をもたれた方のご参加をお待ちしております。
登壇者プロフィール
ゲスト登壇者
上平崇仁
デザイン研究者/立命館大学教授。鹿児島県阿久根市生まれ。筑波大学大学院芸術研究科デザイン専攻修了。草創期から情報デザインの教育と研究に取り組み、近年は人々が協働するデザインのアプローチや、人類学の視点を取り入れた自律的なデザイン理論について研究している。日本デザイン学会理事。著書に『コ・デザイン―デザインすることをみんなの手に』(NTT出版)、「見えないものをみる視点」(Xデザイン出版)など。

吉行ゆきの
ポルノグラフィ研究者/北海道出身。北海道大学文学院博士後期課程1年生。北大経済学部在学中に“変態文学“についてのSNS活動を開始、性表現に対するSNS上の自主規制を身をもって体験したことからポルノグラフィ研究に興味を抱き、文学院欧米文学研究室に進学。読書会を全国で主催する中で、成年漫画の受容に興味を抱き、文化人類学研究室に至る。ジーウォーク出版『コミックカイエン』にて読者参加型の成年漫画書評コラムを連載中。
そのほか(登壇順)
岡部大介(東京都市大学メディア情報学部)
横浜国立大学教育学研究科助手、慶應義塾大学政策・メディア研究科特別研究教員を経て、現職。著書に『ファンカルチャーのデザイン』(共立出版)、 『デザインド・リアリティ』(北樹出版)、『Fandom Unbound』(Yale Univ Press)など。
池原優斗(北海道大学大学院)
北海道大学文学院博士後期課程在学。専門は文化人類学。デザイン人類学的な手法を用いて、科学者の実践に関する研究に取り組む。著書に「アクターネットワーク理論の「人工主体」研究への適用――画像生成AIの分析を例に」『新進研究者 Research Notes 』6: 53-61. 2023。
蓮池公威(東京都市大学デザイン・データ科学部)
1994年より、富士ゼロックスのデザイン部門にて、UIデザイン、インタラクションデザイン、サービスデザインの実践とマネジメントに従事。2022年に独立し、デザイナー(デザインリサーチ/インタラクションデザイン)、株式会社フューチャーセッションズ外部パートナーとして活動を開始。2023年に東京都市大学デザイン・データ科学部教授に着任し、デザイン実践を続けながら、研究教育に取り組む。訳書に『意味論的転回 : デザインの新しい基礎理論』(エスアイビー・アクセス)。
津久井(香川)文 (東京大学特任専門職員)
国際基督教大学大学院行政学研究科博士前期課程修了(行政学修士)。行政学・国際機構論。NPO、企業、研究機関・学術団体などを経て現職。広報・コミュニケーションデザインに関わる。
伊藤崇(北海道大学大学院教育学研究院)
専門は発達心理学、教育心理学。著書に『大人につきあう子どもたち』(共立出版)、『学びのエクササイズ 子どもの発達とことば』(ひつじ書房)など。
参加条件や申し込みについては、下記リンクからお願いいたします。