2月17日(火)、TCU Shibuya PXU(東京都市大学渋谷パクス)にて、第3回リベラル・アーツセンター準備室特別講演会「歴史劇と現代を繋ぐ―豊臣秀吉兄弟の実像と作劇―」を開催しました。
はじめに、東京都市大学 の井上 健共通教育部長より、本講演会を開催するにあたっての趣旨説明がありました。井上共通教育部長は、教養とは知識を蓄えるだけでなく、自らの価値観や思考の軸を形成し、社会に関わる力を育てるものであると述べました。今回の講演会は、そのような新しい教養教育の取り組みの一環として、歴史劇を通して現代とのつながりを考える機会として企画されたものであり、併せて一般参加者との交流を通じて大学と社会の新たな関係が生まれることへの期待を示しました。

続いて、東京都市大学 共通教育部の丸島 和洋教授より、「豊臣秀吉・秀長像の実像」と題した講演がありました。
丸島教授は、研究が進むにつれて、秀吉と秀長の家系や経歴に関する従来の通説には、史実と異なる点が多くあることが明らかになってきたとの紹介がありました。特に秀長は、豊臣政権を内側から支えた極めて重要な調整役であったと強調し、歴史像を理解するには史料に基づく丁寧な検討が欠かせないと述べました。

続いて、演出家で元NHK番組放送局 ドラマ番組部チーフプロデューサー、NHK放送文化研究所メディア研究部上級研究員の吉川 邦夫氏より、「歴史劇の創作と現代」と題した講演がありました。
吉川氏は、大河ドラマは単に史実を再現するものではなく、描かれる題材としての歴史と、作品が制作される時代背景という二つの歴史が重なり合って成立するフィクションであると述べました。「真田丸」における穴山梅雪などの描写を例に、時代考証と作劇の対話を通じて、登場人物を時代を象徴する存在として再構築してきた過程を紹介しました。また、制作される時代ごとに脚本家や演出、俳優が異なることで同じ歴史上の人物であっても新たな人物像が生まれ、俳優の表現力、制作者の構想、時代考証による最新の研究成果を重ね合わせることで、歴史劇は現代と向き合う豊かなストーリーテリングへと結実するとまとめました。

講演後に行われた質疑・討論のセッションでは、参加者から次々と質問が寄せられ、丸島教授・吉川氏は、大河ドラマ制作の舞台裏や時代考証の役割について、歴史研究と創作のそれぞれの立場から回答しました。両名は、史料を丁寧に読み解きつつ作劇との対話を重ねることで、史実と想像力の間に説得力のある表現が生まれるとコメントするとともに、史実とフィクションの境界をどう扱うかについては、視聴者の興味を喚起しつつ誤解を招かない姿勢が重要であるとの認識を示しました。そして、時代考証と作劇がうまくかみ合ったときにこそ面白い大河ドラマだと感じてもらえるのであり、その協働が作品の質を支えているのだと強調しました。

終了後には、登壇者と参加者による懇談が行われ、活発な意見交換が続きました。
TCU Shibuya PXUでは、今後も新たな知見や交流の場を提供するイベントを企画してまいります。今後の展開にご期待ください。